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  • 執筆者の写真kayamashita

それ、いつまで世代論で語るんですか?ー脱・世代論時代にan・an編集長の考えるトレンドとはー


第1回取材

an・an編集長 北脇朝子氏 


サントリートレンド編集部LIGHTHOUSEの雑誌編集長から見た「ミレニアル世代」。第1回のもう一人のお相手は、

マガジンハウスan・an編集長・北脇朝子氏。

「ミレニアル世代にとって“買う”とは?」をテーマにお話を伺おうとしたところ「そもそも世代論である必要性があるのか?」という議論となり…


世の中の気分を「実体化」できるのがan・an

ー(LIGHTHOUSE編集部)

サントリートレンド編集部LIGHTHOUSE、続いてのゲストはマガジンハウス

an・an編集長の北脇さんです。宜しくお願いします!


北脇朝子氏(以下北脇):

宜しくお願いします。


ー初めに、簡単にご自身とan・anの紹介をして頂けますか。


北脇:

an・anは、創刊48年、2年後には50周年になる、グラビア女性ファッション誌。

毎週、女性にとっての旬のトレンド、話題の人をコトを特集しています。

皆さんは、an・anを週刊誌だと意識されるタイミングは少ないと思いますが、実は毎週出ています。(笑)

私は、 食や街を中心とした雑誌、HanakoWEST、Hanakoを経て、an・anを担当しております。女性のライフスタイルに関わる編集をかなり長くさせて頂いています。


ー北脇さんの考える「雑誌の持つ情報編集力」とはなんでしょうか。

北脇:

私自身、紙の雑誌の力を信じていますし、見直されつつあると感じています。

an・anという雑誌の持つ最大の力は、ムーブメントの「実体化」だと思います。


ー実体化?

北脇:

世の中には数多くの流行…たくさんの皆様が興味をもつ情報の種があります。

その多くは一時的なブームでしかないのですが、その中に一部だけ「ホンモノ」がある。

それをきっちりうけとって誌面でカタチにして、読者に届ける。

それが「実体化」なんじゃないかな、と。an・anは週刊誌だからこそ世の中のスピーディな「気」の移り変わりをキャッチできているように思います。


ー情報収集の上で、意識している点はありますか。


北脇:

情報の発信源である磁場の方に出向いて、人々の行動の根っこにある目的を探るようにしています。瞬間の「騒ぎ」だけを取り上げないよう、数の多さよりもその精度や深さを重視しています。なぜ人々がそのように行動するのか?その目的こそが大切なのではないか、と。


「世代」ではなく「コト」で分類すべき

ーでは、ミレニアル世代について伺っていきたいのですが…


北脇:

あの、ちょっといいですか?

ーはい、何でしょうか?


北脇:

私、そもそもあまり「世代」で考えるべきではないと思っていまして…


ーなるほど…根本的なご意見ですね。それはなぜですか?


北脇:

実際、an・anも世代でターゲットを考えないようにしています。

皆の楽しみや行動は、世代を問わない時代になってきてるように感じています。

an・anも、毎号のテーマを「ヒト」ではなく「コト」、つまり行動で切るように心がけています。

かつて雑誌は世代やターゲットのタイプ・属性などによりマッピングが可能でしたが、そうした「世代」起点の雑誌はかなり変化してきているように思います。

型にはめて、タイプ別に世の中を分類するのが難しくなっているのではないでしょうか。


ーだから、ヒトではなくコトで分類する、と。


北脇:

はい。

「行動」を軸にテーマを決めるからこそ、an・anは置かれる棚が定まっていません。

美容、占い、スポーツ、アイドル…本屋さんのどのコーナーでもan・anは置かれることができます。私はこれを「マーケット創造型」と呼んでいるのですが、こうしたコト視点はマーケティング上も大切。なので、ミレニアル世代のマーケティングを考えるとしても、あくまでヒト視点ではなくコト視点で考えた方がいいのではないかな、と。


ーでは「コト」視点で見た時に、「買う」という行動はどのように変化しているでしょうか。

北脇:

まず、嘘がバレやすい時代になってしまいましたね(笑)。

まず大前提として、嘘のない誠実さは今後のマーケティングに必要だと思います。

あとは、買い手の目が厳しくなっているので「なんとなく」では買わなくなっている。

「それは何の役に立つのか?」をシビアに問われるようになっている。

利益や目的がはっきりしている商品が支持されるのだと思います。


ーでは、そうした役にたつモノしか売れない時代なのでしょうか。

北脇:

そんなことはないと思います。例えばan・anでも商品タイアップをすることが多くありますが、きちんと「ストーリー」を作れる、実のある商品は、やはり読者に届いているように思います。

即物的な価値だけでなく、背景まで含めたものに価値を見出して消費するという点においては、今も昔も変わっていないと思います。大事なのは、どうやってバリューを創り出せるか、でしょうか。


ーどうやってバリューを作り出していくことが可能なのでしょうか。

北脇:

個人的にan・anは「バリューを作り出せる雑誌」だと思っています。

例えばバリューで思い出すのは猫特集。

一昨年に初めて猫だけで特集をつくった「にゃんこ♡LOVE」特集は、発売と同時に非常に支持され、その後、しばらく“ブーム”と思える現象になりました。


ーなぜそんなに売れたのですか。

北脇:

猫は元々愛すべきものでしたが。

an・anが特集をした瞬間からの全国の猫を愛する方々からの熱狂が巻き起こりました。

雑誌はそもそも、流行を先取りし、紹介する存在ですが、あらためて雑誌がバリューを作り出せるということを、改めて感じた瞬間でした。

an・anの歴史は長く、世代を超えた…、それこそミレニアルズのような若い世代にとってはお母さんが読んでいた雑誌でもあります。そのような雑誌の持つ信頼感が、バリューを作り出す一端を担っているのでしょう。


ブームの「後」になってから「ねこ特集」をやる理由

ーでは、どんなバリューが必要とされているとお考えですか。

北脇:

皆さんがよく目にし、話題にしていただくことも多いan・an。

テーマを常に気を付けていますが、その軸は、「世の中が気付く前のテーマ」と「既にスタンダードとなっているものの最新」の2つなんです。


ーそうなんですか?!


北脇:

はい。

例えば猫ばかりで恐縮ですが最新号の「やっぱり、にゃんこ❤️LOVE」特集(6月27日売)は、よく考える と不思議なタイミングだと思いませんか。既知の通り、猫ブームはとっくに起こっており、何なら今は、少し落ち着きを見せている。


ー確かに…言われてみると不思議な感じがしますね。


北脇:

しかも表紙はあの「どんこさん」。猫スタグラマーの中でのド定番ですが、あえてご登場頂きました。


ーなぜ「気付く前」と「スタンダード化したものの最新」がいいのでしょうか。


北脇:

「世の中が気付く前のテーマ」は、やはり「先物買い」と「渇望感」「そうだったんだ!の嬉しさと共感」の行動原理があります。


ーでは「スタンダードのものの最新」のものはなぜ?

北脇:

それは定番であることを認めてもらえる「安心感」と、その中の「今」を感じたいからだと思います。ミレニアル世代は共感と承認を求めることが多いように思います。

自分の選択が“間違っていない”ことのなかで、その中の正解を知ることは嬉しい。

雑誌は、「やっぱこれだよね」と世の中に発信しているという事実に対し、共感の共有をお知らせしている部分が多くあると思います。


ー「共感」と「安心」が求められているのですね。

北脇:

ミレニアル世代は、その傾向が強いと思います。

いま、雑誌は、あえて新時代のスタンダードを定義し、提案していくことが大事なんじゃないか、と思っています。


ースタンダード、ですか。


北脇:

スタンダードを知りたい!という知識欲と、定番の安心感を兼ね備えたような…難しいですけど。


ーなるほど。今日はありがとうございました!


北脇:

ありがとうございました。世代の話、全然できなくてすみません…(笑)





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