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  • 執筆者の写真shotaroyahagi

安いだけでは満足できない。お金を使うストーリーとエンタメを求めはじめた生活者

更新日:2021年12月20日




ビジネスパーソンと消費者に日経トレンディ。

ヒット予想の立て方から近年の消費スタイルの傾向について、お話を伺いました。



日経トレンディの3つの役割


ー(LIGHTHOUSE編集部)サントリートレンド編集部LIGHTHOUSE、

今回のゲストは『日経トレンディ』編集長の三谷さんです。宜しくお願いします!


三谷氏(以下三谷):よろしくお願いします。


ー「日経トレンディ」の編集において、何か工夫していること、心掛けていることはありますでしょうか。


三谷:3つほど「日経トレンディ」には役割があるなと思っています。1つ目はヒットの分析です。この役割が「日経トレンディ」の象徴ですが、皆が売れるものを作りたいと思っています。他業界の話は大変参考になるようです。幅広く情報を集めて1つに編集することで価値が出てくると思っています。2つ目は消費者目線です。この商品・サービスはお金を出して買うに値するのか判断します。ビジネスパーソンも消費者として正しい買い物をしたいと思っているので、私たちがその基準を提示したり、商品を評価したりします。3つ目は人の紹介です。どんな人がヒット商品やトレンドをつくっているのか、その方々を紙面で紹介したり、直接出会える機会をつくったりしています。情報だけでお金を出してくれる人はなかなかいなくて、読者向けにセミナーなどの場の提供も目指していますね。


ー取材体制やテーマ設定はどのように決めていくのでしょうか?


三谷:年に2回ヒット特集があり、それが大きいですね。その特集のために、毎月ネタを集めている感覚です。各自の担当分野でヒット商品を追いながら、毎号の巻頭特集テーマでは知らない分野でもやらなくてはいけません。毎月毎月こなしているうちにいろいろなことに詳しくなっていきますね。テーマ設定は企画会議で部員から提案が出てきて話し合って決めることもありますし、私が独断で決めることもあります。

特集テーマにより売上が変わります。なかなかその読みが難しいです。テレワーク特集は売れた一方で、巣籠り特集は売れなかった。テレワークの情報は、今後の生活変化に対応するために、お金を出してでも取りたいほどの情報だったのだとを感じますね。一方、巣ごもりを楽しんだり快適にしたりするのは、わざわざ金を出して買うほど困ってないということでしょう。テーマを考えるときは、それはお金を出しても欲しい情報か否かを考えていますね。タイミングも悩ましいです。例えばスマホ料金の特集。全部情報が出揃ってからやろうかとも思ったのですが、早めにやりました。校了から発売日までに料金プランの変更がありショックではあったのですが、1か月遅らせると他誌と被ってしまったでしょう。トレンドには “前のめり”に特集を組みます。失敗するなら前に転んで失敗するという選択をしてしまいます。また、やったことがないことをやろうというのは常に意識しています。コロナでラジオが伸びているという話があり、前々からラジオ特集をやりたいとずっと言っていました。誰も賛同してくれてなかったのですが、編集長になったときに半ば強引にやりました(笑)



コロナ禍でお金の使い方が変わってきている。モノを通じたコト消費へ。

ーコロナ禍の「日経トレンディ」読者の関心や消費に変化は起こっていますか?


三谷:最近、感じるのは、皆さんお金を使うところを探しているなということです。元々お金を使っていたはずのものが色々と制限されて、旅行に行けない、外食が十分にできない、飲みにも行けないというときに、別のお金の使い方を楽しみながら探している傾向があると思います。例えば、高機能な高価な家電がよく売れています。家の中をどれだけ快適にするか考える創意工夫というか、発想しながら、買い物を楽しんでいますね。

ずっとモノ消費からコト消費にと言われていたと思うのですが、モノ消費がコトをつくりますよね。体験にお金を使うことだけがコト消費では無くて、このモノを買ったら自分はどれだけ面白い時間を過ごせるのか、今までなかったような経験ができるのかということを求めて買いものをします。モノ自体がすごくいいということは、すごくいい体験ができる。家の中でのコト消費が喚起できるかがヒットする商品の条件にはなってきている。なので、お金を使うポイントは、それを使ったらその時間を素敵に過ごせるとかいうことがリアルに感じられるときに、ついお金を出してしまうというのがあると思います。


「ポイント経済」や「推し経済」もお金を使う楽しさ、理由付け


ー価格帯や商材による違いなどはありますでしょうか?


三谷:お金を出すのが少ないからどれでもいいとか、とにかく安く買えればいいというようなことではなくて、そのものに基づくストーリーを一緒に楽しむとか、このタレントが好きだからついこれを買っちゃうとか、何かお金を使うときのストーリーって自分ですごく探しているなという感じはしますね。

他にも、コンビニでこれを買うときに「d払い」で買ったら今10%もポイントが付きますというもの同じだと思います。あれもすごいエンタメで、「やった!10円得しちゃった」ということは、本当にその10円が欲しかったかというより、この選択に俺は勝ったみたいな感じで楽しいという感覚なのだと思います。また、自分が好きなタレントが好きだよと言ったものを買うとか、SNSで誰々が好きと言ったから買うとかもとかも、ストーリーだと思いますね。お金を払う理由を自分の中でストーリーを決めている。例えば、推しタレントのグッズを買うこともそうです。お金を多少変な使い方をしたとしても自分の中で元が取れているというような、推し経済というのがすごく今進んでいると感じます。


ストーリーとエンタメ要素を加えて


ー最近、具体的な企業・商品などでストーリー化・エンタメ化が成功したものどのような商品がありますか?


三谷:P&Gの3色洗濯ボールは上手いなと思いました。粉末か液体でなく、ボール型ならぽんと放り込むだけで、手も汚れないし計量する必要もない、ということがまず画期的でした。さらに、ボールの中に液体を混ぜておくのではなく、3色にして機能を表現したのですね。本当は全部いっぺんに入れて1つのボールでいいのに、3色あることで、何か柔軟剤っぽいやつと漂白剤っぽいやつが加わったんだろうな、ぱっと見てすごいボールだなと感じられるんですよね。

健康トレンド軸では最近ってプロテイン入り商品が増えてきました。しばらくに糖質オフブームが続いて、新しいのがあまり出ていない中で唯一、糖質オフの次に出てきましたね。糖質はオフだけどプロテインだけはオンするという。特に今年に増えていて、在宅で歩かなくなってその分筋トレする人とかが増えてきて、今までよりプロテインに価値を感じるユーザーが増えてきているのだと思います。

ロングセラー商品では森永ラムネ。瓶のような形で水色のプラスチックに入っていたものを、1.5倍の大粒にしてパッケージをパウチに入れただけなのに、売上がほぼ倍になっています。何かのノスタルジーみたいなものを感じた大人が多かったのだと思います。また、仕事中にも勉強中にもぴったりというブドウ糖の打ち出し方も。昔から食べていて美味しかった記憶だったり、お母さんも昔から食べていたのだよと子どもに教えたり、そういう脈々と続いているものに価値を見出してロングセラー商品をリニューアルすることもいいと思いますね。


飲食では「食卓のエンタメ化」


ー外食や食卓などの食の分野についての消費の変化で感じるものはありますか?


三谷:一時期、ラーメンをテイクアウトで食べて。結構ラーメン屋とそんなに変わらない味でおいしかったよと盛り上がっていましたが、それを機に今後ラーメン屋に行かずずっと家でいいやと思う人はいないと思います。従来の外食とテイクアウトや中食はすみ分けていくなとは思います。ただ、流通が変化して新鮮な食材がその日に家に届くという仕組みがどんどん出てきているので、そちらはこれから定着してくるかもと思いました。

また、コロナで外食が出来ない分、食卓はちょっと特別な体験ができるものが人気ですよね。ちょっと高級な調理家電を買っている人とか、新しいホットプレート料理に挑戦している人とか。外食と役割を分けて、家の中でちょっといい料理をするということが定着していくと思います。その料理をするために。何かちょっといい包丁やフライパンなどが売れています。調理器具1個で、調理という行為がエンタメに変わりますね。このフライパンだと凄くステーキが上手く焼けるらしいよと聞いたら1回はやってみないなと思います。

 お酒はエンタメの延長で高尚なところまでいく人がいそうだと思います。自分でアッサンブラージュ(原酒をブランドしてワインをつくる)ができるという商品を取材しました。

楽しみながらどんどん趣味を極めていきたいニーズに合致するものがあるといいんですよね。キリンのホームタップも、キリン一番搾りをひたすら飲めるではなくて、日々楽しみながら色々なビールを試せるので、どんどん深みにはまっていく方にいくじゃないですか。もし、キリンのものだからこれだけにしてよとストップが掛かっちゃうと、そこで好奇心が終わっちゃうので。そこにあまりストップを持たせないで広げられるような商品があるといいなとすごく思いますね。



LIGHTHOUSEが照らし出す未来


~日経トレンディ 三谷編集長~


1.モノ消費コト消費は分けられない。モノからコト消費を喚起できるかがヒットする商品の条件


2. お金を使うために、経済的合理性だけでない「ストーリー/エンタメ」を探している


3.生活者の好奇心にストップをかけず、拡げてあげることがファン化につながる

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