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ひとりの時間が求められる時代 ー令和ならではの「上質な暮らし」とはー

更新日:2019年12月27日












サントリートレンド編集部LIGHTHOUSE、今回のゲストは「&Premium」編集長の芝崎信明氏。

「これからのベターライフ」をテーマに、

時代に先駆けて「プレミアム」を定義し続けてきた&Premiumならではの視点で

語っていただきました。


読んで「機嫌が良くなる」ことが裏テーマの雑誌

 

ー(LIGHTHOUSE編集部)サントリートレンド編集部LIGHTHOUSE、

 第2回のゲストは『&Premium』編集長の芝崎さんです。宜しくお願いします!


芝崎信明氏(以下芝崎):&Premiumの編集長をしている芝崎です。宜しくお願いします。


-&Premiumといえば「ベターライフ」「ていねいな暮らし」「つくりのいいもの」など

 現代を象徴するキーワードを次々と作られている印象です。


芝崎;わたしは創刊から関わっているのですが、創刊が2013年11月ですのでまる6年やっています。11年に3.11が起きて人々のマインドが大きく変化し、13年にdocomoがiPhoneの取り扱いを開始しスマートフォンが一気に普及して、時代が急速に「効率化」を進めていくなかで、「効率のよさより、心地のよさ」というキャッチフレーズを掲げて&Premiumは創刊し、

おかげさまで人気を獲得していきました。


ー編集の際に大事にしていることがあれば教えてください。


芝崎:やはり効率化が進む時代のなかで&Premiumを読む時間はSNSなどのイライラから解放されて欲しいと思ってつくっています。

なので編集の裏テーマは「読んだあと、機嫌がよくなる雑誌になる」なんです(笑)。


ーメインの読者層は、やはり女性が多いのでしょうか。


芝崎:確かに&Premiumは女性誌として編集していますが、そもそも雑誌のターゲットを

考える際に世代ではセグメントせず、テイストでセグメントした方がいいと考えてスタートしました。世代で勝手に区切られることに、抵抗感を覚える方も今は多いでしょうし…。

テイストでセグメントしているので共感していただける男性も多く、&Premiumは男性がよく読む女性誌の一つでもあります。

ただし、あくまで「女性誌として」読みたがっていると思いますが。


芝崎:機嫌のいい女性って、男性はみんな好きなんじゃないでしょうか(笑)。

男性もそういう女性を見ていて気持ちいいし、機嫌がよくなる。なのであくまで女性誌として編集をしています。



手間は「かかる」から「かける」ものへ変化した

 

ー&Premiumが提案する「ていねいな暮らし」について、詳しく教えてください。


芝崎:実はあまり「ていねいな暮らし」というフレーズは誌面では使っていないんですよね。でも、このフレーズが世の中でよく使われるようになってきた。それもだんだんと

ポジティブな言葉になっていった印象です。&Premiumが提案する「ていねいな暮らし」

あるいは「ベターライフ」とは、普段の生活を上質にすることを意味します。ハレの日とか、ゴージャスなものではなく、あくまで「普段」の生活。だから「&Premium」という雑誌名も、普段の生活に「プレミアムを足しましょう」という意味で選びました。

プレミアムとは、一つ上の上質、なのです。


ープレミアムの意味合いが、日常に根ざしたものなのですね。


芝崎:たとえばPanasonicさんの「ふだんプレミアム」という家電シリーズのプロモーションに関わらせていただいたのですが、あれも「普段の生活をプレミアムに」をコンセプトにしています。家電はいまも当時も過酷な機能競争に巻き込まれていたので、そこから脱却して、家電と暮らす生活の豊かさ、心地のよさにフォーカスしました。そのことを伝える世界観を作り上げるために、 CM のテーブルの上に置く花瓶や花の種類、出演者が使うタオルの質感などのディテイルを細かく相談しながら決めていきました。プレミアムな普段の暮らしを彩ることができるのは、「つくりのいいもの」つまりクラフトなものたちです。&Premiumでも「つくりのいいもの」特集はすごく売れました。


ーなぜこうした「つくりのいいもの」が必要とされるのでしょう。


芝崎:そもそも、やじりや針など質の

いい道具をつくることができたので人類は滅びることなく続いているそうです。時間をかけてていねいにつくられたものに生命力を感じるのだと思います。

そして、人は生命力のあるものに豊かさを感じる。また最近では「効率化への

疑問」が湧き上がってきました。効率が良いことは、必ずしも幸せなことではないと気づき始めた。効率の反対にある概念が「手間」ですね。

つくりのいいものは、手間暇かけてつくられている。「手間」に豊かさを感じるわけで、「手間」は「かかる」ものから「かける」ものへと変化していったのです。

ー確かに手間をかけられた品物は、質の良いものであるように感じることが多いです。


芝崎:クラフトもそうですが、手間暇かけられた一品は、使うことで心地よさを感じます。

現代は“気持ち”をベースとした消費がとても増えていますから、こうした「心地よい生活」の需要は高まっています。&Premiumのタイトルも「心地よさ」を表したものが増えてきました。


ーなぜ手間暇がかかると「心地よい」のでしょうか。


芝崎:いろいろな理由があるとは思いますが…ひとつはそれが誠実だと感じるからではないでしょうか。いまのプレミアムには、誠実さが求められていると思います。


ー誠実さ、ですか。


芝崎:雑誌も商品も、いまは誠実なものの方が選ばれ、売れる時代。ネット社会では不誠実や嘘はすぐに見破られて、炎上してしまいます。手間をかけたという誠実さは、本当にいいものだと信じられることにつながるのではないでしょうか。若い人を中心にサステナブルやエシカルが流行していますが、それも誠実さの一種だと思います。


自分と向き合う「ひとりの時間」の大切さ

 

ー手間暇を「かける」時代の価値観の

 一番の変化とは。


芝崎:「ていねいな暮らし」が世の中で受け入れられるのと同じタイミングで広がった現象があります。それは「ひとり〇〇」という行動です。

ひとり焼肉とか、ひとり旅とか。

かつては「孤独」はネガティブな印象が持たれていましたが、こうした「ひとりの時間」が、最近どんどんクールで、ポジティブなものへと変化してきていると感じます。


ーたしかに積極的に「ひとり〇〇」を発信する人が増えました


芝崎:「ひとりの時間」が価値化してきているのです。&Premiumでも「ひとりの時間は、

大切です。」という特集をつくったのですが、とても反響がありました。

みんな「それそれ!」という反応。インサイトを突くことができたのでしょう。

おかげさまでその号はとても売れました。


ーなぜひとりの時間がそこまで価値をもつのでしょう。


芝崎:技術の進歩で効率よく暮らすことができるようになり、その余った時間をどう使うかが重要になってきました。けれど、余った時間の大部分をネット上でつながることに使ってしまっていることに違和感が出てきたのだと思います。SNSなどの普及で、物理的にひとりでいても、心理的にはひとりでない時間が増えてしまい、自分の内面と本当に向き合う時間が足りないと感じているのでないでしょうか。自分と向き合う時間の豊かさに気づいてきたのです。お酒との向き合い方も変化が出てきていると感じます。みんなでワイワイもいいけれど、ひとりでじっくりの時間ももっと欲しいと。


ーお酒が「ひとりの時間」とどのように関わるのでしょうか。


芝崎:わたし自身がお酒が好きなので良くわかるのですが(笑)、お酒には大きく「食を豊かにする」「コミュニケーションを円滑する」「自分のことを考える時間をつくる」

といった3つのメリットがあると思うのです。この3つめの「自分のことを考える時間」の

提供というのがすごく大切になってきました。コーヒーやスイーツ、ウイスキー…すべて「ひとりの時間」を豊かにするものです。そのどれも&Premiumの誌面では大切なコンテンツです。みなさんあまりご存じないかもしれませんが、&PremiumにはBarを扱う連載ページがずっと続いていて、人気があります。お酒の中でもウイスキー、特にBarで過ごす時間は

わかりやすいかもしれませんね。


ーBarですごす「ひとりの時間」はどのような時間なのでしょうか。


芝崎:蒸溜酒(スピリッツ)、とくにウイスキーはそうだと思うのですが、これらはまさに「手間暇かけたお酒」ですよね。だからこそ、その手間暇をじっくり楽しむためにもこの酒はひとりで味わいたいのです。「目の前のものに意識を集中させる」という体験はスマホが手元に当たり前にある時代にかなり珍しい体験となりました。このような豊かな時間が減ってしまっているのです。これからの時代、ウイスキーに求められる価値は、これまでのお酒の仕事や生活のストレスを“なくす”、つまりマイナスをゼロにすることではなく、ゼロをプラスにする、ポジティブな価値になっていくと思います。編集者として、雑誌としても

お酒をこういう「良い習慣」にしていく試みにしていきいたい。「心地よく暮らす人が、

習慣にしていること」という特集も&Premiumでつくったことがありますし、お酒をこうした価値観や視点で捉えていくことが大切だと思います。


ーこれからのウイスキーの「プレミアム」性を考えさせられる、

 貴重なご意見だと思います。今日は面白いお話をありがとうございました!


芝崎:ありがとうございました。





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