第4回Oggi編集長 塩谷薫氏
サントリートレンド編集部
LIGHTHOUSEの雑誌編集長から見た
「ミレニアル世代」。
第4回のゲストは、小学館「CanCam」編集長から7月に「Oggi」編集長にうつられた塩谷氏にインタビューを実施。
「ミレニアル世代にとって“つながる”とは?」をテーマに、メディアとファンの
繋がりから塩谷さんの個人的なエピソードまでおうかがいできました。
「CanCam」というおもちゃ箱を空にした
ー(LIGHTHOUSE編集部)サントリートレンド編集部LIGHTHOUSE、
第4回のゲストは小学館『Oggi』編集長の塩谷さんです。宜しくお願いします!
塩谷氏(以下塩谷):
今年の7月から「Oggi」の編集長をしている塩谷です。宜しくお願いします。
ー編集の際に意識されていることはありますか。
塩谷:
Oggiに関しては次の号から作っているのでまずは3年前から編集長をしていたCanCam時代の話をしますね。CanCamのターゲットは20代全般なんですが、
約10年前にブームとなった、いわゆる“エビちゃんOL”のように、
ひとつのステレオタイプの女性像にあてはめることは、少なくとも20代の雑誌では
もう古いなあと思いました。
CanCamという本は、おかげさまで全国の皆さんのイメージがすごく固められている
ブランドです。しかしそれに捉われていては前に進めません。
CanCamっていうおもちゃ箱を一回空にして、台割りのテーマもモデルの契約形態も、
紙の質まで変えたんです。
20代の女子が喜ぶ「イマ」ってなんだろうってそれを突き詰めて作りました。
ターゲットとつながるリアルな場を設け、仕掛ける
ーCanCamではナイトプールも新しい取り組みとして話題になりましたね。
塩谷:
3年前に、夏休みのシーン別コーデというページを作ることになりました。
その際、設定するシーンを現場に確認したんです。
いつもだと花火大会、海、フェスなんですね。
しかしそのときは「ナイトプール 」というシーンが出てきたんです。
感度の高い読者の皆さんが、ホテルのナイトプールに行きたいと言っている、と。
さらに聞くとニューオータニのナイトプールに皆、行きたいと言っているという話でした。なぜナイトプールなのか?と突き詰めていくと、
日に焼けないし、昼間よりも夜の方が水着を着ていても恥ずかしくない、
そういう心理があるんだなって気づきました。聞けば聞くほどナイトプールに
興味がわいてきて、ならばCanCamでプロデュースしちゃえば、
ということになりました。
一年目は赤字でしたが、みんなずっと写真を撮り合っている光景をみてびっくりしました。それで二年目は海外のセレブに人気のかわいい浮き輪をいっぱい準備したり、
フォトスポットを設けたりと色々工夫しました。
ーその2016年ごろから「インスタ映え」の言葉もよく聞くようになりましたよね。
塩谷:
はい。本当にみんな写真ばっかり撮っていて、
その姿を観察していると発見が沢山あって、そこから生まれた企画もありました。
CanCamの付録「自撮りライト」を買い求めるおじさまたち
ー20年間女性誌の編集に携わって、何か世の女の子の意識が変化したなって思うことはありますか?
塩谷:
時代とともに流行は移りゆきますが、「自分」や「自分の思い」を発信したい!伝えたい!という気持ちはずっと変わってないと思います。
一昔前の女子というとたとえばルーズソックス時代。
ルーズソックスを履いてみんなで渋谷歩いて目立ちたいって気持ちと、
インスタでみんなに見てほしいっていうのは気持ちの根源は変わらないなあと思います。SNSがない時代はメディアが掘って「ルーズソックス現象」を発見して拡散したけれど、
今は個々に発信できるようになりました。
ー今とはブームの作られ方が違う、と。
塩谷:
今は物やスタイルに溢れて、現象化する前に分散する時代でしょう。インスタ映えについてどう思われますか?ってよく聞かれますけど、
バリエーションが多すぎて一言で言えないのが正直なところです。
一つの現象に対する票数が薄まっている気はしますね。
昔はつながりが狭いからこそ厚く、熱量が大きいものもあったんですよね。
でも一方でSNSが着火になって始まるブームもたくさんありますよね。
ーそうですね。バズれば一瞬で広まりますよね。
塩谷:
CanCam2017年2月号のハート型自撮りライトの付録のときもそうでした。
実はメインのターゲットの読者層ではない、虫や鉱物を自分の家のミニスタジオで撮っているようなおじさまたちの間で、
綺麗な写真が撮れる!と話題になったんです。九州のある大学の先生がツイートして
くださって、バズったみたいで。
ーええ!?そんな方々がCanCamを?
塩谷:
ここで“着火”のすごさを知りましたね・・・。CanCamが本屋にないってTwitterで話題になり、さらにそこからみんな書店に走って探してくれたんです。
編集長自身が現場で感じる、上司・先輩としてのミレニアルズとのつながり方
ーミレニアル世代と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
塩谷:
デジタルネイティブかどうか。あと、自分の世代の頃より失敗を恐れている気がしますが、仕方ない部分もありますよね。
予算考えて誌面を作らなければならなかったり、
昔のようにノリばかりではできなかったり・・・。
我々のような上の世代のにも責任はあると思うのですが・・・。
それから、日本の少子化の影響も少々感じます。
一人っ子が多くなりましたよね。直接は関係ないかもしれませんが、
一人でやるとパフォーマンスがいいのに、特集を二、三人で組んでもらうと遠慮しちゃってうまく進まないなあと思ったりもします。
ー「一人っ子」の切り口は今までの取材でも出てこなかったので新鮮です!
あとはコミュニティのあり方も変わってきているからでしょうか?
塩谷:
SNS上でつながることが「人とつながる」ことだと思ってる人はいますよね。
ただ一時期よりは「いいね」(承認欲求)問題はおさまったと思います。
SNSも成熟期に入ったのかな。
ーつながっている、もしくは見られている窮屈さっていうのもありますよね。
塩谷:
そうですね。ただ、窮屈って言っちゃうと本当に窮屈になっちゃうんですよ。
マスメディアにいる人間として、それを言っちゃうと、ネガティブなことを認めると、
パンドラの箱を開けることになる気もします。
そしてまた炎上に繋がっちゃったりして・・・。
全方位ウケ、だけど実は「自分本位」で無理しない。
ーファッション意識としては、ミレニアル世代の特徴ってあるんでしょうか。
塩谷:
どんな服を着るか、というセンスは好感度にもつながると思っています。
やっぱり人って大なり小なり人に好かれたい。
好感を持ってほしい相手によって服の系統や選ぶ雑誌って変わってきますよね。
特に昔のCanCamなら男子、Oggiだと同僚の女子、とか。
相手によって自分の「こうありたい像」を変えてたとも言えるかもしれません。
でも今はいい意味で「自分本位」。自分の「なりたい像」を貫いているんですね。
自分を軸に作っておかないと、周りの人が多様すぎて、
もう振り回されすぎるんだろうなと思います。
振り回されても食いつきたいしそこに面白みを感じると思って
私は生きてきてしまいましたが・・・(笑)。
ミレニアル世代って振り回されるのは基本無駄と思う世代かもしれません。
だから自分を軸において、全方位でよく見せるっていうのが主流なのかもしれないです。
ーたしかに。振り回されるくらいなら最初から調節しようみたいな意識はあるかもしれないですね。
塩谷:
ミレニアル世代は怒られるのも慣れてないかな、とも思います。
昔はggるとかなかったですもんね。わからないことがあれば資料室に駆け込んで
電話して。「寄り道に宝がある」って教わりましたし。
今は、部下を叱る時、「これで本当にいいのだろうか。
私は彼らから見ると“刀を持ってる侍”なのかな」って悩んだりします。
江戸と明治ならずっと江戸時代にこだわってる人、みたいな・・・。
これはちゃんと後輩に伝えて残していこうってことと、これは後輩の言うことを聞こう、
時代に合わせよう、ということがそれぞれあるかな、と思って日々を過ごしています。
ー塩谷さんもそんな悩みを抱えていらっしゃるんですね。
本日は本当にありがとうございました!
塩谷:
ありがとうございました!
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