
第3回
東京カレンダー編集長 日紫喜康一郎氏
サントリートレンド編集部LIGHTHOUSEの雑誌編集長から見た「ミレニアル世代」。
第3回のゲストは、「東京カレンダー」編集長の日紫喜氏にインタビューを実施。
「ミレニアル世代にとって“食べる”とは?」をテーマに、「食」だけでなくファンたちの生き方そのものを応援する「東京カレンダー」ならではの視点を語っていただきました。
東京カレンダーは「真正面からリア充を応援する」雑誌
ー(LIGHTHOUSE編集部)サントリートレンド編集部LIGHTHOUSE、
第3回のゲストは東京カレンダー『東京カレンダー』編集長の日紫喜さんです。
宜しくお願いします!
日紫喜氏(以下日紫喜):
1年前から東京カレンダーの編集長をしている日紫喜です。宜しくお願いします。
ー編集の際に意識されていることはありますか。
日紫喜:
食の紹介って、美味しいご飯の写真だけでなく、店の内装や街・エリアの特徴、さらに店や街に来ている人を描いてみる、っていうアプローチの仕方もあると思うんですね。
ある料理やお店を紹介するときに、大きく写す意味があるメニューは大きく写しますが、
料理以外にフォーカスすることもよくあります。
ある意味、食の雑誌としては邪道かもしれませんね。
ーエリアという切り口で特集を組まれていますが、毎号のテーマはどのように決めるのでしょうか。
日紫喜:
毎号、エリアとテーマを設定する設計書を書くんです。
例えば浅草の号だと表向きの観光地的な浅草ではなく、「本号における“浅草”とはどんなエリアなのか」を考えて、オリジナル定義や時間軸・シチュエーション、また読者となる
ターゲットを決めて設計書に落としていきます。
ー我々でいう「企画書」みたいなものですね。
日紫喜:
そうかもしれません。この設計書にのっとってどのお店を紹介するか、見送るか、
それとも違う切り口でコラムの中で紹介するか、などの選択を行います。
取捨選択こそが編集者の仕事だと思いますね。
ーなるほど・・・では、デートバイブル的に見せているのは、あえてそうしているのでしょうか。
日紫喜:
元々アッパー層向けのメディアなので、そう見えるようにはしています。高価格帯をおさえているので、どうしてもデートっぽくなるのが必然というか。“男女”のシチュエーションが多くなります。
ーアッパー層の男女の意識は、バブル時代のホイチョイ的な価値観から変わってきているのでしょうか。

日紫喜:
ホイチョイはすごいですよね。あの時代にはウケたなあ、面白いと思います。
今の時代、特に若者の中では、初デートで張り切っていいお店に行くのはださい、ビストロのカウンターくらいがかっこいいという感じが主流かもしれませんね。
ただ、「いい店に連れて行きたい」と思う男性のプライドや、それを望む女性の感覚みたいなものは、昔から変わっていないと思います。
ーたしかに、根本の感覚や欲求はいつの時代も共通かもしれませんね。
日紫喜:
「東京カレンダー」は“真正面からリア充を応援する”雑誌なので、そこのスタンスは崩したくないですね。ちゃんと仕事して、人よりいいサラリーをもらって、人生を思いっきり楽しもうとする生き方を肯定する。信念を持って、こういう生き方もあるよねっていうのを応援する。
心のざわつきやダークな部分も描くことで得られる共感
ーだから根強いファンも多いのでしょうね。雑誌のインタビュー記事やweb版の連載も
含め、リアリティがすごいですよね。
日紫喜:
そうですね、特に若者にはリアルさとか共感が一番大事だと思っています。
だから、撮影用にモデルさんを使っても顔の上はカットするし、心のざわつきとかちょっとダークな部分も隠さずに描く。格好の描写もこだわったり、一緒に行く人の設定も細かく考えたり。
ーひとつ一つの設定や描写も細かくて、本当に存在している人物みたいです。
日紫喜:
店の情報収集にはインスタグラムも活用します。スポット検索から女の子のホーム画面に
飛んで、その店のテンションとか雰囲気が分かるんです。あと連載のライターさんに関して言えば、書く人自身が遊んでいないとなかなか書けないでしょうね。
文章がお上手なだけじゃ決して書けない、自分で経験していないと描けない世界ってありますよね。
誌面は母艦、webコンテンツは戦闘機
ー雑誌とweb版で、載せる情報の違いはありますか。
日紫喜:
webは成功しているけど、一記事ずつバラバラとした情報でしかないと思います。
もちろんwebにしかできないこと、書けない内容はありますが。一方雑誌は、スマホでは再現できない大きい見開きの写真を載せることができるし“パッケージ感”がある。情報量ではwebに勝てないけれど、一店舗につき4~6ページを割くなどの贅沢な作りをして、雑誌にしかできない「見せ方」でwebに勝てるところがあるんです。
ーでは、二つのメディアでどう役割分担をしているのでしょうか。
日紫喜:
雑誌は、うちのメディアでいう母艦。一年の内12打席しか立てないんです。
一種のクレジットというかブランディングでもあるので、手堅さがいりますね。
webの各コンテンツは戦闘機みたいな感じ。消えて行くからこそ、色々なトライアルができる。反応のフィードバックは見ているので、そこで当たったものは雑誌に活かせますし。
ーweb版では次々と新しいコンテンツが開発されてますよね。動画とか。

日紫喜:
動画もアプリもリアルイベントも、新しい施策はたくさんやっています。
前向きなトライアルという意味で。普通の出版社よりもフレキシブルだと思いますね。
トライアルも撤退も早い。メディアは攻めていかないと生き残るのが難しいですよね。フォーマットやコンテンツの成功事例にしがみついていたら新しくなれない。
捨てるタイミングも重要ですよね。
ー本日はありがとうございました!
日紫喜:
こちらこそ、ありがとうございました。

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